奥村先生講演会レジュメ−美健賢食と楽創楽食のすすめ ◇

伝承料理研究家
奥村彪生

T. 日本の長寿・高齢社会は本物か。人工的要素が大きい。
(イ) 江戸時代の儒者 貝原益軒が理想とした寿命に達した。

「50は不夭、60は下寿、人生70古来まれなり。80は中寿、人生百歳をもって上寿となす。」 『養生訓』
益軒の養生に対する思想は、酒は軽く、腹八分目、心豊かに。
現在の日本において百歳以上は3万人を超える。但し寝たきり老人は世界一(3万人以上)であり、介護を必要とする人は150万人以上である。
長寿者の85%は女性。長寿者の70%は農林水産業の従事者。

(ロ) 高齢社会になった理由。

・医学、薬学の進歩。乳幼児の死亡率低下。
・住環境の快適化。冷暖房完備により年間の室温はほぼ一定。
・経済発展により収入が増加し、食生活が豊かになった。

U. 長寿・高齢社会のひずみ、生活習慣病の増加。

その原因
(イ)食べすぎ、飲みすぎ → 不摂生
(ロ)運動不足
(ハ)食生活の偏り。

準菜食型(伝統食)から油脂・肉食型へ。
   ファーストフーズ、インスタント食品の食べすぎ。
   内食から外食型へ → 台所の外部化(社会化)
          
           家庭料理の崩壊

   家庭料理 と 外食の違い
      ↓        ↓
   無償の行為 すべて金で換算(料理そのもの以外に器の 使用料、食空間、サービスも買っている)

V. 日本の伝統食は地場により異なる。方言型食文化である。
(イ) 日本の食文化はかつて3系統であった。

・アイヌ食文化圏→北の食文化
・琉球食文化圏→南の食文化
・列島型食文化圏→本州・四国・九州を結ぶ中の食文化

(ロ)

地域で異なる味噌、醤油の色と味。産物も異なる。
郷土食は郷土色。ローカル食こそ伝統の食文化。

(ハ)

地場の食文化を喪失させた企業食。
地場の食文化の復興を!

W. 日本の伝統食の基本は五味・五色・五法、日本の伝統料理は簡単。
(イ) 五味:鹹、甘、酸、辛、苦
(ロ) 五色(栄養学の五群に通じる)
白:エネルギー源。コメ、ムギ、アワ、ヒエ、キビ、ソバ、イモ。
赤:たんぱく質源。ダイズとその製品、魚介、卵、肉類。
黄:ビタミン・ミネラル・せんい質源。根菜類。
緑:ビタミン・ミネラル・せんい質源。葉果菜類。
黒:ミネラル源。キノコ、海藻類。
日本民族はかつて米食希求民族だった。雑穀は米より価値が劣るのか?
『秋山紀行』鈴木牧之、『東西遊記』橘南谿では雑穀は長寿の秘食としてたたえられている。現在の長寿者の多くはこれらを主食としてきた地域の方々である。
 
日本民族は魚食民族ではなく、準菜食型であった。
(ハ) 五法

生:刺身、漬物、(なれずしも含む)など。
焼く:塩焼、照焼、味噌漬焼、など。
煮る:煮付、煮染、含め煮、など、だしの文化(主に野菜、乾物、麩や大豆とその製品を煮る)
和える:油脂を含まない和え物のソースが世界一豊か。
炊く(蒸す)
油脂欠乏・アミノ酸依存型の民族であった。
揚物、炒物が欠落した食文化。

(二) 日本の伝統食の欠点

@塩分の摂りすぎ
Aカルシウム不足
B動物性たんぱく質と油脂の不足。現在は過剰。

X.

食べごとの教育と食べごとの機能。
果たして伝統食・家庭料理は復興するか。

食べごとの教育とは、社会の成り立ちや歴史、文化、人との付き合い方、言葉使い、礼儀作法、食材作りの大切、食空間のコーディネイト(食の美学)や自然環境に配慮することも学ぶ全人格的、総合学習の土台である。単なる栄養知識や料理つくりを学ぶだけではない。

食べごとの機能

@身体的機能
A精神的機能、心の癒し
B社会的機能、コミュニケーションをとる装置
C美的センス向上機能
D産業・経済的機能
E農林水産業の健全なる振興機能
F教育的機能

Y. 健康的な食生活をすすめるために。

(イ)快食
(ロ)快噛
(ハ)快便
(二)快眠
(ホ)快汗
(ヘ)快談
(ト)快笑
(チ)快唱

@
A
B

早寝早起
食事は、朝は王様の如く、昼は王子の如く、夜は貧者の如く。
ぼけないために読み・書き・そろばん。
しっかり食べて、しっかり運動をして体力をつけ、しっかり勉強・学習をして学力、知力をつける。脳をよくする食べ物はない。自ら鍛える。